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2017年3月11日土曜日

問題解決ができないデザイナーはデザイナーじゃない


デザイナーのみなさん、自分の仕事をどう定義していますか?

クリエイターということばに、ずっと違和感を持ってきた。
ひとつは、あれもこれもクリエイターという箱に入れられ始めて、「で、何する(できる)人なの?」というのがわからないことが多いこと。もうひとつは、このカテゴリにデザイナーが含まれる時があること。

大学で就活をしていた頃、広告業界の著名な人が「アートとデザインの違いは、情報伝達ができるかだ」と言っていた。アートは受け手側の解釈にゆだねられていいが、デザインは送り手の意図を伝えないと意味がないと。当時の私はそういうもんか、と思った。今は、デザイナーはそれ以上のことをやらなければいけないと思っている。

モノの見た目を美しくするだけが、デザイナーじゃない。自分視点でかっこいいものをつくるのが、デザイナーじゃない。問題解決をするのが、デザイナーだ

数年前、IwBのデザイン戦略プログラムで、あらゆる分野のメンバーと地域問題の研究に取り組んだ。中には政治学出身やメディア出身もいて、彼らはイラレやフォトショを使うような仕事には就かないだろう。でも、私は彼らのことをデザイナーだと考えている。

彼らは、問題解決ができるから。
世の中のWicked Problem(*1)を解決するためにデザイン思考を使い、リサーチからアイデア出し、プロトタイプ、修正、提案を、異なる専門領域の人々と協働で築き上げられる。

ウェブデザインもグラフィックデザインもプロダクトデザインも、たしかな鍛錬と技術が必要な分野だ。でも「それを使って何を解決しているのか」を語れるデザイナーが増えてくれないことには「デザイナー=見た目をよくする人」という見方が続き、そこに憧れた若者がまたデザイナーになるだろう。

北米でもまだ、「デザイン」というものの解釈はビジュアルに偏っているが、「かっこいい見た目をつくる人」のことはビジュアルアーティストと呼ばれて区別されるようになってきた。

見た目を整える人材も、スペックさえ渡せばプログラミングしてくれる人材も、今はクラウドソーシングで超絶安く雇えるようになった。多少英語ができる人なら新興国の人材を、先進国には太刀打ちできないぐらいの安さで雇えてしまう。

今は、ユーザー中心型デザイン(User-centered Design)の時代だ。デザイナーがいいと思うものを売り出すのではなく、ユーザーにとっての問題を解決することが求められている。

デザイナーが「おたく、こうした方がええでっせ」と言って企業が大金を払う、という従来のデザインは終わりつつある。そうすると、一部の敏腕デザイナーと破格で雇えるデザイナーに仕事が分散され、中くらいの給料をもらって人から渡されたモノの見た目を整える仕事でしてきたデザイナーは、生き残れなくなる。

はじめまして、Pitomieといいます。
トロントのサービスデザイン会社でデザイナーとして働いています。ヘルスケア系クライアントにお金をもらいながら、ガンやHIV患者さん、その治療を取り巻く医師、看護師、介護士といったユーザーの体験を向上させる戦略のデザインと、その戦略を実現可能にするための組織システムの改革を手伝う仕事をしています。

あなたはデザイナーとして、何を解決していますか?



PS:これから数回に渡って、サービスデザインに関する記事を書きます。

*1 Wicked Problemとは、複雑な事象が絡み合って解決が非常に難しい問題のこと。詳しくはこの辺を参考にしてください(英語です)→wickedproblems.com

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